戦争映画ぎらいなアタシだけど、’父親たちの星条旗’を見てきたわ。’ミリオンダラー・べイビー’にノックアウトされたアタシとしては、イーストウッドの新作として見過ごせなかったの。
’
星条旗’。
正直いうとちょっと身構えながら劇場に行ったの。こういうご時世だし、「アメリカ万歳!」みたいな内容だったらどうしようかと思って・・・でも完全にアタシの杞憂だったわ。さすがイーストウッドね。わずかでも疑いを持ってしまった自分がイヤになったわ。
この映画見終わって、アタシ、ある映画思い出したの。ゲーリー・クーパーがアカデミー賞受賞した’ヨーク軍曹’。1941年の作品よ。そう、第二次世界大戦真っ只中のアメリカ映画。戦意高揚映画として製作されたものらしいわ。でも監督はマリリンの’紳士は金髪がお好き’を撮った娯楽映画の達人、ハワード・ホークスだもの。遅れた時代の異国に生まれたアタシもビデオで充分楽しめて、かつ感銘を受けた作品なの。
ヨーク軍曹、戦場に赴く前は農村暮らしで七面鳥撃ちの達人。誰にも真似できないワザを持ってるの。そんなヨーク軍曹が第一次大戦に出兵。七面鳥撃ちのワザを生かして大活躍。たちまち英雄になって、今でいうセレブに祭り上げられるの。でも根が素朴なヨーク軍曹はある日気付いて選択するの。「僕は派手な生活よりも、田舎で恋人と結婚してつつましく暮らしたい・・・」
アラ、10何年も前に見た映画だから詳細までは自信ないけど、おおまかなあらすじは間違ってないはずよ。そしてそんな素朴なヨーク軍曹と若き日のクーパーのイメージが重なって、見終わった後なんだかすがすがしい気分になった覚えがあるわ。
以下、
ネタバレもあるからヤダっていう方は読み進むの
おやめなさいな。
’父親たちの星条旗’の主要人物も祭り上げられた英雄たち。でも英雄を演じざるを得なかったニセの英雄なの。
アメリカ軍が硫黄島を占拠。「ヤッター!さっそく星条旗掲げようぜ!!」
数日後、硫黄島に着いて旗を見た軍のお偉さん。「あの星条旗は価値がある。俺が記念に持って帰ろう。」
どこの国でも軍では上の命令が絶対。第一群が揚げた名誉の旗はお偉さんに進呈。「仕方ねぇや、もいっぺん別の旗揚げ直そうぜ!」第二の旗を前とは違ったメンバーたちがかかげます。そこを前線従属のカメラマンがパチリ!
全米の新聞のフロントページを飾ったその写真は、苦労なく星条旗を掲げた第二群たちのもの。最初に旗を掲げた兵士たちは戦死・・・事情を知らない大衆は、第二群の生き残りを英雄に祭り上げるのでした。
純朴な第二群の生き残りたち。素直に告白します。「俺たちが最初に旗揚げたんじゃないんっすよ^^;」。彼らを英雄にしたてあげた政府、今さらどうにもできず「戦争の持続のためには国民の理解と国債が必要。お前らがPRしろっ!」
かくしてニセのヒーローと政府、両者確信犯の戦意高揚キャンペーンが始まるのでした・・・
虚飾に満ちたそんなインチキ英雄の武勇談なんて、そんなに長く続くはずないわよねぇ・・・イーストウッドはニセの英雄に祭り上げられた第二群の主要人物3人の生き残り人生を執拗に追っかけます。悲惨な戦争を生き抜いて、お国のためにと説得されて虚に生きることを余儀なくされて、やがては忘れ去られたその人生・・・ヨーク軍曹みたいに、途中で勇気を持って我を貫けたならば、どんなにか違った人生を送れたかもしれないのに・・・
戦場シーンも悲惨なこの映画。「
これが戦争の現場なんだ!」っていうシーンもイーストウッドは提示します。ア〜タがお若い方ならば、どうなるかわからない人の世ですもの、あんな場面に遭遇すること、我慢できますか?
戦場のみならず、敵国のラジオ放送にも心乱されるのよ。第二次世界大戦のアダ花・東京ローズ?多分あれよねぇ。そのシーンもちょっとショックだったわよ。
イーストウッドが創り出した、戦時下の諸々の直視できない数々のシーン。それがア〜タの現実になってしまったらどうする?
ラストシーン。
第二の旗を掲げた後。戦は小康状態。若い兵士たちに許しが出ます。「海で泳いでもいいぞ!」
裸になって屈託なく海水浴を楽しむ若き兵士たち。自然と戯れる無邪気な人間。でもカメラが引くと、海の向うには無数の軍艦が待機してて・・・
イーストウッドの静かな抗議が表現されてた見事なシーンでした。
次回作は、同じ硫黄島の戦いを日本人側から見た’硫黄島からの手紙’。監督は同じくイーストウッド。冷静で公平な彼の目を通して見た’Jap’に期待大だわ!